エアコンプレッサーで悪ふざけは殺人罪ではないのか?

茨城県龍ケ崎市の株式会社・師岡本社工場で、吉田佳志容疑者が、エアコンプレッサーを使って同僚の石丸秋夫さんの体内に空気を注入して死亡させたとして逮捕された事件について、

現在、取り調べ中でおそらく公判では「傷害致死罪」によって裁かれるものと思われます。

傷害致死罪

3年以上の有期懲役

 

ネット上では「傷害致死じゃなくて、殺人罪だろう!!」という意見が飛び交っていますが、果たして今回のような事件で殺人罪に問うことができるのでしょうか?

 

事件の概要

吉田佳志の勤務する会社は?【繰り返されるエアコンプレッサーによる悪ふざけ」】

吉田佳志の勤務する会社が判明【エアコンプレッサー死亡事故】

肺が圧迫されて窒息するまで【エアコンプレッサー死亡事件】

 

殺人罪となるには

殺人罪が成立するための、もっとも重要な要素の1つに「殺意」の有無があります。

 

今回のケースで言えば、「悪ふざけ」が原因であり、取り調べても「死ぬとは思わなかった」と供述しています。

つまり、「殺意」はなかったということになり、「殺人罪」の適用はできません。

 

一方で、次のような意見もあります。

「殺意はなかったのかもしれないが、同様の事件が何度も起きており、エアコンプレッサーの作業に従事している者であれば、その危険性を知らなかったはずはない」

 

つまり、

「悪ふざけにせよ、その結果として死亡事故につながる可能性を知っていてやったのであれば、殺意があったとして、殺人罪に問えるのではないか」

 

そもそも「殺意」とは何なのでしょうか?

 

「殺意」とは

一般的に「殺意」という言葉を使いますが、法律的には

「未必的故意」

これは、

相手が死ぬかもしれないが、死んでも構わないという認容する気持ち

 

この「未必的故意」いわゆる「殺意」があったかどうかは、、様々な情況証拠の積み重ねによって判断されます。

 

どのような状況証拠が、殺意を認定する要素となるのかといえば

 

例えば凶器が刃物の場合、

被害者が受けた傷が、頭部、頸部、心臓など、その傷によって死に至る可能性が高い場所を損傷している。

被害者が受けた傷が、刃物の長さと同程度の深さがある。

被害者が受けた傷が、刃物の長さと比較して浅い場合でも、骨の内部にまで刃先が及んでいる場合や、刃物の根本まで血痕がついている場合などは、より強い力で加えているものと考えられる。

凶器の刃物の先端の尖っている場合や、刃渡りが10㎝以上の刃物が用いられた。

絞殺、射殺、毒殺など、その行為自体が相手を死に至らしめようとした行為。

犯行後に被害者が危険な状態にあることを認知しながら、あるいは推測できる状態にありながら、加害者が救助しなかった。

 

逆に、殺意があったとは認めにくい例としては

犯行者と被害者が格闘して亡くなった場合は、冷静な判断が出来ず、無我夢中で予想外の力がかかる場合があるとして、殺意が認められにくくなる。

言葉で、「殺してやる」などと言ったとしても、単なる脅し目的であるとも考えられるため、それ自体で殺意があったとは認定しにくい。

 

最終的には、1つの状況証拠で判断するのではなく、様々な状況証拠を組み合わせて総合的に判断します。

 

結論として「殺人罪」になるの?

以上のようなことから、今回のエアコンプレッサーの事故で「悪ふざけ」を「殺意」と認定することは難しいと思われます。

 

今までにも同様の事故が何度か起こっていますので、

「エアコンプレッサーで肛門から空気を入れる」=「死に至らしめる」

ということが広く認知された状態であれば、殺意が認定されやすくなりますが、現状では殺人罪として起訴することは無理でしょう。

 

ちなみに、他人を死に至らしめた場合、その状況によって様々に罪状が変わりますが

 

過失致死罪

50万円以下の罰金

重過失致死

5年以下の懲役または禁錮
あるいは、100万円以下の罰金

 

これらと比べると、傷害致死罪はより重い刑罰であることは間違いありません。


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