不登校生徒は学校に行くな?内申書の真実

はてな匿名ダイアリーに投稿された記事が、中学生を中心に話題になっています。

「学校に行きたい中3生に「学校に行くな」と指導する辛さ」というタイトルで投稿された記事は

皆さんは、長期欠席からの復帰を望む中3生に「学校に行くな」と指導することができますか。

という書き出しから始まる長文です。

 

全文はこちらをご覧ください。

 

徐々に拡散され、多くのブックマークがつき、様々なコメントが物議をかもしています。

多くの意見としては、記事に同調する内容で、大きく分けると次の2通りに分かれるようです。

・舛添元知事に対する批判

・内申書に対する批判

 

概要としては、

・東京都のある公立中学3年生が不登校になった。

・その生徒は、学校には通えないが勉強がすごくできて、塾で受ける模試で、偏差値70以上

・地元の難関校、都立国立高校への進学を希望している。

・かつての都立入試には、特別選考枠があり、募集定員の1割を「内申点を見ないで当日の筆記試験の得点だけで決める」という枠があった。

・その特別選考枠が舛添元知事の時代に廃止されてしまった。

・不登校でオール1の内申だと、難関校への合格は不可能になってしまった。

・内申をオール1にしない方法は「学校に通わない」ことで、そうすれば内申は判定不能となり、学力テストのみで合否判定がなされる。

・結果として、今、東京都内では、不登校で実力相応の都立高校への進学を希望する生徒に、

「中学校は絶対に登校するな。1度でも登校すると、都立高校へ進学できなくなるぞ。」

と指導している。

・学校に通いたいという復帰の意欲もある生徒が、中学校に1度でも通った瞬間に、内申点が付いて、進学への道はすべて閉ざされる。

 

特別選考枠はなぜ廃止されたのか

舛添元知事を批判するのは自由ですが、正直言ってそんな細かなことまで知事が判断するわけがありません。

教育委員会が現場の声を吸い上げて、方針に沿って制度をまとめて最後に知事に了解を得る。

舛添さんはハンコをついただけでしょう。

 

特別選考枠はすべての高校で導入されていたわけではなく、進学重点校など一部の高校です。

定員の1割まで学力検査のみで合否判定をされるので、極論すればオール1でも国立、日比谷、西といった都立トップ校に合格することは可能でした。

それは極端な例としても、オール3くらいでかなりの難関校に合格している例は数多くいます。

これを東京都教育委員会は「入試制度が複雑になりすぎた」という理由で廃止します。

 

入試制度が複雑になりすぎていることは事実です。

昔は都立高校であれば基本的な合否判定の方法は同じでしたが、現在では1校1校すべて違います。

受験生も志望校が変わると、何に重点を置いて勉強すればいいのかが変わってしまうという不満があったことは事実です。

 

もう1つ。

「学校で真面目に努力してきた生徒が不合格になり、不真面目でいい加減で勉強だけできる生徒が難関校に合格しているのは納得がいかない」

中学の教員からも、そして受験生からもこのような不満があがりました。

実際に不登校ではなく、入試のために学校を休んで昼間から塾通いをしている中学3年生は多いのです。

 

そんな声にこたえたのではないかと私は推測しています。

同時期に行われた、実技教科(音楽・美術・体育・技術家庭)の内申点を2倍にするという変更と合わせて、「内申重視」への意向が色濃く出ています。

つまり、この数年、一貫して学力重視へシフトし続けてきた東京都教育委員会が、その揺り戻しをしているように見えます。

 

入試制度というのはそのときどきの社会の流れや、実態に鑑みて、行き過ぎた流れを補正したり、目指すべき方向に誘導したりしながら揺れ動くものだと思います。

確かに最もわかりやすく公平なのは、学力調査の一発勝負。

 

しかし、東京大学が推薦入試を取り入れたり、早慶の入学者の多くがAO入試によるものになってきている昨今、多様な入試があっていいと思います。

 

その意味で特別選考枠もその多様性の1つであり、1割という割合が適正かどうかはともかくとして、残したうえで各都立高校側に採用するか否かの判断をゆだねておく余地を残しておいてもよかったのだと思います。

 

登校しないように指導しているのか?

この投稿で最も注目を集めたのは、

長期欠席からの復帰を望む中3生に「学校に行くな」と指導する

本当にこのような指導が行われているのでしょうか?

 

投稿の中では

「1日でも登校すれば内申はオール1になる」

とありますが、そのような学校がある可能性は否定できませんが、制度上の事実としては、明確なデマです。

 

東京都教育委員会によると、調査書の記載と出席数について明確な規定は存在しません。

様々な観点から正当な評価を下すように促しているのみです。

1日だけ登校しても、すべての教科の授業を受けるわけではありません。

さらに1回授業を受けたからといって、それで正当な評価は下せません。

定期考査も受けなければ、ほぼ間違いなく「評定不能」です。

 

ちなみに、授業を受けないで別室で自習していても、保健室登校でも、カウンセラーや担任と相談しても、授業日に学校にくれば登校としてカウントされます。

では、評定不能でなければ確実にオール1になるのでしょうか?

 

国立教育政策研究所によると、不登校生徒であるからといって一律に評定不能としないように提言しています。

定期的に家庭訪問するなどして、学習状況を確認して、評価可能な部分については評価することとしているのです。

 

したがって、不登校で1日も登校しなくても、評価をすることは可能なのです。

もちろん、実際問題として教科担当が入れ替わり立ち代わり家庭訪問するわけにはいかないので、担任が課題を持って行って渡し、やり終えた課題を教科担当に渡すという作業になります。

その上で、定期考査を別室で受けるということをすれば、1度も授業に出ることなく評価を受けることは可能です。

それでも、「5」を取ることは難しいと思いますが、理論上は可能です。

「3」はもちろん「4」の可能性もあり得ます。

 

実技教科については、例えば体育や音楽は実技を評価してもらえる場がないと、さすがに「1」を避けるくらいで精いっぱいかもしれませんが、美術と技術家庭については課題を家で作って提出していれば「3」までならば可能性はあります。

残念ながら学校によってはここまで丁寧にやってくれない場合も多いのは事実ですが、

不登校生徒の評定は、オール1と決まっているわけではありません。

あくまでも理論上ですが、

5教科はオール4

体育と音楽は2

美術と技術家庭は3

このあたりが可能な最大値でしょう。

 

全てを完璧にやったとして、実技2倍で計算すると

65点満点中の40点

内申点でいうと、300点満点中184点です。

 

実際問題として、都立トップ校に合格する生徒だとオール5は全然珍しくないし、最低でもオール4でしょう。

オール5の生徒との差は、116点

オール4の生徒との差は、56点

確かに厳しい差ですね。

 

ただでさえ学力の高い生徒との競争なので、現実的にはよほど飛び抜けた得点力がなければ合格が難しいのは事実でしょう。

しかし、中堅校ならば十分に合格可能な範囲です。

 

繰り返し言いますが、そこまで手厚く評価してくれるかどうかは学校や担任によって異なります。

 

まとめ

結局、特別選考枠廃止は是か非か?

個人的には、廃止ではなく残したうえで各校の判断に委ねるというのが正解だったと思います。

しかし、これも個人的な推測ですが、この廃止に至った過程には受け入れる都立高校側からの要望もあったのではないでしょうか?

実際に特別選考枠で合格した方が見ると気分を害する記載になってしまいます。

予めお詫び申し上げたうえで記載します。

 

特別選考枠で入学してきた生徒は確かに勉強できるが、学校生活で問題のある生徒が多いのではないか?

 

都立のトップ校の生徒は、勉強をガリガリやるイメージかもしれませんが、それぞれ中学時代にリーダーだった生徒が集まっているので、学校行事にも非常に前向きで、学校生活が充実している生徒たちの集まりです。

進学実績を上げることが経営に直結する私学はともかくとして、都立高校の現場の教員が「勉強のできる生徒」「学校生活を真面目に送れる生徒」のどちらに入学してほしいと願っているのかといえば、間違いなく後者です。

「勉強はできるけれど問題の多い生徒」というのは教師にとって最も厄介な生徒です。

そんな現場の声を吸い上げての廃止だったのではないかと推測しています。

 

合わせてお読みいただける、内申書と都立高校入試の関係が理解しやすいです。

内申書重視への流れ


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