溶連菌の感染による敗血症とは?森慎二さんの命を奪った恐ろしい病気【水虫からも発病?】

2017年7月4日、多臓器不全のため死去した西武の森慎二コーチの葬儀が、7月4日に西東京市の総持寺大日堂斎場で営まれました。

出典:www.jiji.com

その際、喪主である父親の口から死因について詳しいことが伝えられました。

「本人の死因に関しては、毒性の強い溶連菌の感染による敗血症でした。」

 

「溶連菌の感染による敗血症」とはどのような病気なのでしょうか。

誰にでも起こる可能性があり、死亡率が高いという怖い病気です。

 

溶連菌の感染

溶連菌とは「溶血性連鎖球菌」の略称です。

出典:eminews.jp

細菌の一種で、自然界に広く存在する細胞核を持たない微生物です。

通常「溶連菌」といえば「化膿レンサ球菌」の事を指し、「溶連菌感染症」といえば「化膿レンサ球菌による感染症」のことを指します。

溶連菌といえば、子どもに多く見られる感染症ですので、子育てをした経験がある方ならば、誰もが一度は聞いたことがあるはずですね。

子どもに多いので、子どもにしか感染しないと思っている人もいますが、もちろん大人にも感染します。

ただし、大人は感染しても発症しない場合が多いです。

それは大人は子どもの頃に感染していてすでに保菌者になっている場合が多いからです。

症状がないにもかかわらず咽頭に溶連菌を持つ人を保菌者と呼びます。

幼稚園、小学校で調べると10~20%程度の保菌者が見つかります。

また溶連菌感染患者家族を検査しますと多くの保菌者が見つかります。

また、自分が持っているものとは別の種類の溶連菌に感染すれば発症してもおかしくはないのですが、ある程度の免疫力があれば簡単には発症しません。

大人は体調不良等により免疫力が低下しているときに感染すると発症することになります。

感染経路 飛沫感染、接触感染、経口感染など。
潜伏期間 2~5日
症状 のどの痛み
発熱
発疹
いちご舌

いちご舌とは

舌が腫れ、表面にいちごのようなブツブツの赤みができる状態。

出典:kakonacl.xsrv.jp

 

溶連菌感染症の治療

溶連菌感染症には抗生剤の投与が必要です。

抗生剤のない時代の溶連菌感染症は、死に至る怖い病気とされていましたが、抗生剤の登場により事情は一変しました。

今では普通の風邪と考えてかまいません。

しかし抗生剤の服用は一定期間必要です。

感染力は比較的強い病原体ですが、抗生剤の投与が開始されますと、すぐに感染力がなくなります。

 

溶連菌感染症の予防

ワクチンはなく、手洗いやうがいなど以外に有効と考えられる感染予防法はないとされています。

溶連菌の中にはいくつかの亜型があります。

軽いのどの炎症程度で自然治癒するものから、毒性が強く進行によって、肺炎、膿胸、敗血症、髄膜炎にまで広がり、命にかかわるような場合もあります。

 

溶連菌の感染から敗血症に至るまで

溶連菌感染によって起こる病気で怖いものは

  • 溶連菌が人の組織を直接破壊する
  • 生きた溶連菌に対する免疫反応によって 症状が発現する急性感染症
  • 溶連菌の産生する毒素によって惹き起こされる毒素性疾患
  • 免疫異常によって起こると考えられている病気の中には、溶連菌感染が引き金になることがある

そのなかで特に怖いものとして、「劇症型溶連菌感染症」があげられます。

 

森コーチを死に追いやった病気は?

劇症型溶連菌感染症

(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)

溶連菌急性感染症が原因で起こる最も重い感染症です。

「劇症型溶連菌感染症」は、「人食いバクテリア」とも呼ばれ、突然発症し、死に至ることの多いこの病気が、森コーチにも発症したのではないかと推測します。

※正式な発表ではなくあくまでも推測です。

 

「壊死性筋膜炎」(えしせいきんまくえん)

溶連菌急性感染症の最も重症な病型で、「劇症型溶連菌感染症」の1つ。

症状

高熱、全身状態の不良、局所の腫脹・疼痛などで、初期症状は風邪に似ています。

しかし、筋肉や皮膚、内臓などの細胞が壊死されていくのがこの病気の特徴であり、腕や脚に痛みが起こります。

壊死のスピードは1時間に約2~3cmという、信じられない速さで細胞を破壊します。

急速に細胞が壊死していく様から、通称「人食いバクテリア」と呼ばれています。

異常に気が付いて病院についたときにはすでに手の施しようがないこともあり、早い場合には、発症してから、24時間以内に死に至ることもあるということです。

 

致死率

細胞が壊死するスピードがあまりにも早いために、早期治療が難しく、一度発症してしまうとその致死率は30%~70%にも及ぶといわれる恐ろしい病気です。

 

治療方法

発症してすぐに抗生物質を大量に投与し、外科的手術によって壊死した部分を切除すれば治療できる可能性もあります。

 

感染経路

外傷や熱傷、水痘などで皮膚になんらかの障害がある場合に、そこから感染し、最近が血液内に入ることで発症する危険性が高いとされています。

また、咽や肛門などが感染経路となることもあるようです。

 

劇症型溶連菌感染症患者が激増

1992年から、毎年50~60件の劇症型溶連菌感染症が報告されています。

年齢に関係なく、健康な人にも突然発症するということですので怖いですね。

しかも、1992年代後半から増加傾向にあります。

2009年 約100人
2010年 約120人
2011年 約200人
2012年 約240人
2013年 約200人
2014年 約260人
2015年 431人
2016年11月13日まで 442名
出典:doctor.mynavi.jp

 

劇症化する原因

通常の溶連菌感染症であれば、抗生物質を用いた治療法が確立しており、単なる風邪と同じと考えれれています。

また、重大な合併症を防ぐための対策もなされています。

ところが、抗生物質で簡単に治癒するはずの、溶連菌感染であっても、傷口やのどなどから血液中に入り込み、劇症型することがあるのです。

しかも、溶連菌がどのようにして劇症型になるのかについては、今のところ明らかになっていません。

劇症化した場合、発症後数時間から24時間以内に急速に悪化して敗血症性ショックを起こします。

敗血症状態になった場合、筋肉の壊死性変化や腎機能障害、肝障害、ARDS、DIC、意識障害などの合併症を引き起こし、多臓器不全となる場合が多いため、これらの合併症に対する対症療法も必要となります。

 

水虫から壊死性筋膜炎に?

水虫の正体は白癬菌(はくせんきん)というカビの一種。

ところが、この水虫から「壊死性筋膜炎」になってしまう例があるそうです。

 

白癬菌が、皮膚の一番外側にある角層から、その下にある表皮細胞に到達。

炎症を起こし、激しいかゆみを感じ、さらに指の間の皮がめくれ、ついには赤くただれてしまいます。

この時、白癬菌に冒された指の間は筋膜へと通じる傷口となり、その傷口から「溶連菌」に感染することがあります。

そのときに、免疫力の低下した状態であれば、溶連菌が急激に増殖します。

「かゆみ」がやがて足の痛み、そして足の甲の赤い腫れにまでなっても、水虫が悪化したとしか本人は思っていないので、薬局で水虫薬を買ってくるだけで、医療機関に受診することをしない。

そうこうしているうちに、症状は悪化し、関節の痛みや高熱、そして、足がどす黒く変色。

最終的に溶連菌は全身の血管をめぐり、すべての臓器の機能が停止して死に至ります。

最初の足の痛みからわずか15時間後に死亡という報告もあります。

たかが水虫と軽く見ないで、夏を前に早めに専門医で治療しましょう。

 

毒素性ショック症候群

壊死性筋膜炎とともに、溶連菌急性感染症の最も重症な病型で、「劇症型溶連菌感染症」の1つです。

血流中に放出された毒素に対する免疫アレルギー反応により、急性のショック状態を発症し、多臓器不全に至ります。

原因

主に、黄色ブドウ球菌の毒素によって引き起こされます。

A群レンサ球菌(溶連菌)が原因となることもあるようです。

 

感染経路

黄色ブドウ球菌が、傷口から感染したり、女性が生理時にタンポンを使用し、その中で増殖した場合に起こります。

 

症状

高熱、咽頭の赤み、咽頭痛、目の充血、下痢、筋肉痛など。

日焼けのような発疹が、手のひらや足の裏を含む体全体にでき、その後、皮膚が剥がれていきます。

著しい血圧の低下と、腫れが生じます。

血液が正常に凝固しなくなり、出血しやすくなり、また出血した場合には激しい出血となります。

腎臓、肝臓、心臓、そして肺などの複数の臓器が機能不全になったり、機能を停止します。

レンサ球菌(溶連菌)性毒素性ショック症候群では、傷は痛みを伴います。傷口の周辺で壊疽が起こる場合があります。

 

致死率

レンサ球菌(溶連菌)の感染による場合には、70%に及ぶ患者が死亡します。

ブドウ球菌の感染による場合には、タンポンの使用等、月経と関連する症状の際には5%

それ以外では15%の患者が死亡します。

生存できた場合には、完全に回復することができます。

ブドウ球菌に感染したタンポンが原因の場合、症状は再発することがあり、たいてい最初の異常から4カ月以内にこれが起こりますが、初回よりも軽度な症状となります。

治療方法

すぐに入院、通常は集中治療室で治療を受けます。

発症した時点では、既に毒素が、血液中に流れているため、抗菌薬では治療できません。

血漿交換、透析、血圧を正常値に戻すための点滴などの治療が行われます。

呼吸に問題が出ている場合が多く、人工呼吸器が使用されます。

また、感染した組織を手術で切除する場合もあり、壊疽が起こっていれば、手足を切断することもあるようです。

 

敗血症(はいけつしょう)

「溶連菌感染」から、壊死性筋膜炎や毒素性ショック症候群などの「劇症型溶連菌感染症」となり、最後には「敗血症」を引き起こし死亡。

森コーチの病状はこのようなものではなかったのかと想像します。

敗血症についても改めて確認してみましょう。

 

敗血症とは

感染症を起こしている場所から血液中に病原体が入り込み、重篤な全身症状を引き起こす症候群です。

細菌感染症が全身に波及し、制御不能な生体反応に起因する生命を脅かすような臓器障害。

発症した時点で、非常に重篤な状態にあり、治療しないで放置すれば、ショック、DIC、多臓器不全などから早晩死に至ります。

患者数は世界で年間約2700万人。

そのうち約800万人が死亡していると報告されています。

死亡率は30%という高さになります。

 

症状

悪感・ふるえを伴う発熱

重症の場合には逆に低体温になることもあります。

心拍数や呼吸数の増加もみられ、血圧低下、意識障害を起こしショック状態となる場合もあります。

これを「敗血症性ショック」と言います。

また、重要臓器が障害されると呼吸不全・腎不全・肝不全といった、多臓器不全を併発することもあります。

国際的な診断基準では感染症が疑われSOFAスコアがベースラインから2点以上増加しているものを敗血症としている。

SOFAスコアとは、呼吸・循環系や中枢神経系、肝臓、腎臓および凝固系といった臓器障害を簡便に点数化してその合計点で重症度を判定することを目的に作成されたものです。

 

敗血症の治療方法

強力な抗菌薬投与とともに、その症状に合わせた、さまざまな治療法が必要となります。

敗血症は近年の抗菌薬の進歩によって、治療効果が改善されていますが、治療が遅れや合併症の程度によっては、致命的となり、3人に1人が死に至ります。

また、急速に症状がすすむ特長があり、時間単位で重篤化してしまう場合あります。

決め手となるような有効な治療法はなく、早期の診断と適切な抗菌薬の使用、各種合併症に対する支持療法によって改善されることがあります。

ちなみに、敗血症それ自体は、うつる病気ではありません。

 

敗血症と似た疾病

菌血症

血液の中に細菌が存在する状態そのものを指す言葉です。

抜歯の後などに血液を調べると血液中から細菌が発見されることがありますが、これは抜歯によって血液中に少量の細菌が入り込み、一時的に菌血症の状態になっていると考えられます。

一時的に細菌が血液中に入り込むことは日常生活の中でも、気が付かないうちに、しばしば起こっているのですが、通常は身体に何の影響も与えることなく、身体からすみやかに細菌が排除されるため心配はいらないと考えられます。

菌血症があるからすぐに危険というわけではありませんが、敗血症では、しばしば菌血症がみられることも確かです。

(出典:https://askdtopics.jp/articles/200886#02)

 

SIRS(全身性炎症反応症候群)

SIRSは感染によらない全身の炎症も含む疾病です。

各種の侵襲によって誘引された全身性の急性炎症反応による症候。致命的な多臓器不全状態の前段階。

SIRSの段階で集中治療を行ない、多臓器不全状態への発展を阻止することが求められる。

(出典:wikipedia)

 

多臓器不全については、こちらの記事も参考にしてください。

森慎二コーチ急死【溶連菌による敗血症】多臓器不全とは?恐ろしい病気の予防法。

 

溶連菌感染による合併症

その他に溶連菌感染によって引き起こされる感染症についてもまとめてみました。

これらについては、適切な抗生物質の投与などにより対策が確立されているもので、放置しない限りは死に至るような疾病に発展することはありません。

溶連菌感染症にはリウマチ熱、急性糸球体腎炎と呼ばれる特有の合併症があり、溶連菌感染が治癒した数週間後に発症します。

溶連菌に対する抗体は、溶連菌感染は抑えられるのですが、この抗体が心臓や関節、腎臓に反応して、合併症を発症してしまうことがあります。

 

急性糸球体腎炎(きゅうせいしきゅうたいじんえん)

主な症状  血尿、浮腫、高血圧

潜伏期間   1~2週間(平均10日)

急性糸球体腎炎は自然治癒し、通常は1~2週間で回復に向かい、症状は急速に改善します。

また、慢性に移行することはありません。

 

リウマチ熱

主な症状   発熱、関節炎、心臓内膜炎

関節炎は、自然治癒し慢性化することはありません。

心臓内膜炎は、炎症自体は自然治癒するのですが、心臓内膜の一部である僧房弁に瘢痕を残すことがあります。

こうなると、弁の変型をきたし弁膜症といわれる慢性の心臓病になってしまいます。

 

非常に怖い合併症ですが、リウマチ熱や急性糸球体腎炎は溶連菌感染を治療しないときに起こる合併症です。

適切な抗生剤の投与が行われていれば、合併症を起こすことはありません。


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